映画感想:貞子vs伽椰子 ~怖がらない奴はぶっ殺す~

ワクワクもんですね。

光光太郎です。


2016上半期最後に映画館で鑑賞したのは


貞子vs伽椰子


でした。ネタバレありで感想を書いていきますよ!

■あらすじと解説

「リング」の貞子と「呪怨」の伽椰子というJホラーを代表する恐怖の2大キャラクターの共演が実現した作品。「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズや「ノロイ」「オカルト」などホラー作品を多数手がける白石晃士監督がメガホンをとり、山本美月が主演、玉城ティナ、安藤政信らが共演する。その映像を見ると貞子から電話がかかってきて2日後に必ず死んでしまうという「呪いの動画」を見てしまった女子大生の有里。そして、入ったら行方不明になるという「呪いの家」に足を踏み入れてしまった女子高生の鈴香。共に呪いをかけられた2人を救うために立ち上がった霊媒師の経蔵は、貞子と伽椰子を戦わせるという秘策に打って出る。(映画.comより引用)


■感想

この「貞子vs伽椰子」は、「リング」シリーズの貞子と「呪怨」シリーズの伽椰子が文字通り激突するという作品です。元々はエイプリルフールネタだったにも関わらず、それすら宣伝だったかのような今作は、最近の日本ホラー作品でファンの多い白石晃士監督の手によって作られました。


私は西洋のホラーは大好きなのですが、日本のホラーは精神にくる恐怖をジメジメと与えてくるので苦手でした…。なので「リング」も「呪怨」も白石監督の過去作も観たことがありませんでした。しかし凄まじい話題作ですし、お世話になっているヒナタカさん(@HinatakaJeF )も激押しだったので鑑賞に踏み切ったところ、最高の1作だと言える「今の」ジャパニーズホラー映画でした!Twitterで「まるで仮面ライダーのMOVIE大戦だ!」というのも納得で、貞子編、伽椰子編、激突編がシームレスに繋がる構成になっていました。



さて、前回では1軸3要素のフレームワークに沿って感想を書いていきましたが、今回もそれに則っていきたいと思います。

「貞子vs伽椰子」での軸は誠実に作られたジャパニーズホラー映画でした。それを形作る要素は、ホラー映画としての好演、貞子,伽椰子という題材に対して誠実、ジャンル映画として誠実というものだと思います。

ホラー映画としての好演

まずは何と言っても役者陣の好演が、今作をカルトでエネルギッシュな作品にしています。

貞子編と激突編の主役にして今作の元凶である倉橋有里を演じるのは山本美月さんという女優さんで、「アオイホノオ」というドラマのトンコ役で有名な方ですね。この方が実にいい「薄っぺら大学生」の演技をされるんですよ。序盤では、自分の0.5秒思考の判断だけでしか行動していないJDの様子を、絶妙な表情で演じているんですよねぇ。というかこの役、殆ど表情が変わらず凛とした態度を貫き通すんですが、そこが実に「大学生らしい」んですよ。だからこそ、貞子や伽椰子が現れた時に滅茶苦茶怖がるんですけどね。

彼女の自分勝手さが招いた今作の騒動を観ている我々にとって、彼女は最高のカタルシスを与えてくれます。瞬発力のある演技ではなく、全体を一定のテンションで演じることで「ホラー映画女優」として確かな仕事をされていたと思います。


そして伽椰子編と激突編に出る高木鈴花を演じる玉城ティナさんは、見事な怖がり演技をみせていました。この方はとても大きな目を持っているんですが、その目を見開いて怖がる様子は「怖がる人が怖い」描写にもなっていて、とてもホラー映画らしい演技が似合う方でした。


ホラー映画らしい好演が素晴らしい役者さんとしては、上記の主役級2人よりも佐津川愛美さんが頭一つ抜きんでている印象でした。貞子編において呪いのビデオを見てしまう有里の友人の役を演じているのですが、そのビデオを見るシーンからして「シワの寄せ方」が完璧で、酷く怯えた様子を魅せているんですよ。そしてビデオを見て以降、佐津川さんの「怖がり演技」と「捻くれ演技」が加速します。怖がるだけ怖がった後に自暴自棄に囚われて最後呪い殺されるまで、彼女は「ホラー映画女優」として最高の役者であったと言えるでしょう。


脇を支える方々の演技も「ホラー映画らしい」ものが多く、すんなりとホラー映画として楽しめる様になっていました。端役でも誰も馬鹿にすることなく、真っ当に演技指導と演技が行われているのだなと。



貞子、伽椰子という題材に対して誠実

「貞子vs伽椰子」は異なる2つの超有名シリーズの主役を登場させるという凄まじい作品なのですが、ギャグの様な設定に甘えることなく「貞子と伽椰子という題材をどう描くのか?」ということに対して考え抜かれて作られていました。


今作のお話では貞子と伽椰子は「昔の都市伝説」として扱われており、研究本や笑い話のネタにされています。そして恐れを抱くべき存在を蔑ろにする人々、枠にはめようとする人々を、「得体のしれない存在」として貞子や伽椰子が恐怖のどん底に叩き落とすお話なんですね。最後には「退治すべき存在」として扱い罠にはめた輩を協力してぶっ殺すと…。


このお話の大筋を見ると、今作がメタ的な視点を持った作品であると分かります。現実の世界でも、かつて日本中を恐怖に陥れた貞子や伽椰子が、今では恐怖の対象ではなくコンテンツとして消費され笑われる存在となってしまいました。これは今作の宣伝を見ても明らかですよね。つまり、現実の貞子と伽椰子の状況をお話に落とし込んでいるんです。

恐怖演出を見ても「得体のしれない存在」としての演出が強調されていました。コンテンツとして知っていたはずなのに、理解を超えた、枠で捉えられない何かがそこにいる…そんな恐怖です。劇中の人物も観ている我々も、馬鹿にしていた存在が「死」を伴って迫ってくる恐怖に打ち震えるわけです。

そして、恐怖するべき存在を笑い、枠にはめ、商業に利用し、映画として消費している我々を呪い殺すかの様なエンディング…。今、貞子と伽椰子の恐怖を描くということに対して、誠実に向き合って作られていることが伝わってきます。

現実の宣伝や社会認識すら物語に盛り込み、それを恐怖描写に変換していた今作は、映画というメディアの豊かさ、可能性を示していますよね。


また、貞子と伽椰子それぞれの恐怖の描き分けも行われていました。簡単に言うと、貞子は「迫りくる恐怖」で、伽椰子は「誘い込む恐怖」であると。貞子は呪いのビデオを見た者に対して何が何でも迫り、ぶっ殺す。ロードローラーの様に全てをひき殺す恐怖ですね。

伽椰子は呪いの家に人々を呼び込み、恐れながらも引き寄せられてしまう人々を、ぶっ殺す。女性詐欺師の様な恐怖ですね。

そんな流派の異なる彼女達が、生意気な人間にお灸をすえるために立ち上がり、最後は敵対からの共闘!合体!新生!貞子伽椰子視点に立つと、とても元気が出る、エネルギッシュなお話であると言えます!ここでも貞子や伽椰子に対してリスペクトが行われていますよね。



ジャンル映画として誠実

「コンテンツ化された恐怖の復讐を、メタ視点を持って描く」という要素があることを前述しましたが、今作はコンテンツ化された作品としても最高に楽しめるようになっているんですよ!

「貞子vs伽椰子」では、全編に渡って「いよっ!待ってました!」イズムに溢れていました。ホラー映画として楽しみにする要素がしっかり入っているんですね。


冒頭では日本家屋を「分かる怖さ」で描くんですね。ギシ…ギシ…という板の間のきしむ音、生活感がありすぎて逆に異様な空間、木造で暗い場所の純粋な怖さ…日本家屋は怖い!ということを再認識しました。その後は貞子が出ますしね。

そして何よりも、少しでもムカつく人物は全員ぶっ殺す、という素晴らしさ!ホラー映画のと言えば「ムカつく空っぽ人間が無残に死ぬ様」を楽しみにするわけですが、そこを徹底しているんですね。

いじめっ子は殺す!暴力に訴える奴は殺す!商品を馬鹿にする奴は殺す!自分勝手な奴は殺す!親のために生きようと思えない奴は殺す!等等…しまいには殆どの登場人物が呪い殺され、映画自体もぶっ殺す直前で終わるという爽やかな幕切れ。「これからも恐怖は続くかもしれない…」とかでも「生き残って良かった!」でもなく、「ギャー!うわー!グァァァァ!!!」で終わるという鮮やかさ。頭を空っぽにして楽しむジャンル映画として、恐怖を見世物として消費する映画として、最高の終わり方ですよ!



ホラー映画としての好演、貞子,伽椰子という題材に対して誠実、ジャンル映画として誠実という要素によって、内容の深さだけでなくコンテンツとしても面白い作品になっていました。題材に対しても、恐怖に対しても、娯楽に対しても、誠実に作られたジャパニーズホラー映画だと言えるでしょう。



■超個人的感想

面白い点

①アナログ小物の数々

②美人に水をぶちまける爆笑シーン

③リアルな女子高生



①アナログ小物の数々

冒頭で古き良き昭和日本家屋が出る今作では、アナログな小物が多く出ます。特にビデオとブラウン管テレビが堪らなかったですね…。幼い頃は映画やアニメの中古ビデオを買いあさっていたので…。商品管理に殆ど関心が無い様な中古屋も素晴らしいの一言。あの空間に浸りたいですよ…。ガラスで頭割るのは勘弁ですが。


②美人に水をぶちまける爆笑シーン

中盤で佐津川さんが除霊を受けるシーンがあるのですが、ここでは必要以上に佐津川さんがおばちゃんに苛められるんですよ。佐津川さんの顔に叩きつけられる水!水!水!佐津川さんの口に流し込まれる水!水!水!それを情け容赦なくぶち込むおばちゃんの勢い!顔がゆがみまくる佐津川さん!

本当に辛そうなんですが、あまりにも本気で行われる水除霊の数々には爆笑を禁じ得ませんでした…。これは冗談ではなく、おばあちゃんも佐津川さんも本気で挑んだ結果の「シリアスな笑い」であると思います。


③リアルな女子高生

玉城ティナさんと仲良くなる女子高生2人がいるんですが、その会話のやり取りや身振りが「リアル」なんですよねぇ。美化された可愛さは全くなく、ブラックな噂を笑いながら話すウザさ。しかし屈託なく玉城さんに話しかける友好的な姿勢。リアルです。

特に行方不明のニュースを話しながら玉城さんに行きつくまでの件は「あぁ…いる」と思える自然な演技でした。



残念な点

①幽霊と言うより怪物、西洋的ホラーに

②恥ずかしい台詞多い

③ご都合主義


①幽霊と言うより怪物、西洋的ホラーに

いわゆるジャパニーズホラーらしい、じっとりとした恐怖表現は殆どありませんでした。音で盛り上げ恐怖を与えるような演出が多めなので、幽霊表現を期待すると肩透かしを喰らいます。理解できない何かがいる、という恐怖はあるのですが、ハッキリ映るし音がずっと鳴っているので、エンターテイメントなホラー描写がやはり強めです。


②恥ずかしい台詞多い

学食でのやり取りや、車の中での「もしかして怒ってる?」というやり取り等、そんなわけあるかい!!という台詞が結構あります。いくらジャンル映画と言ってもこれは酷いですよ…。


③ご都合主義

まぁジャンル映画なので致し方なしですが…。特に玉城さんが呪いの家に惹きつけられることに殆どロジックが無いことは、大分ノイズになりました。貞子編は納得のいく流れになっていましたが、伽椰子編はかなり無茶苦茶に組み込まれていた気がします。合体することは最高なので、あり!




今作られるべき、今観られるべきジャパニーズホラー映画の傑作であると思います。何より観た後に元気が出る作品なので、おススメです!

(とか言って、コンテンツとして扱っている私は呪い殺されますね…。)


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