思い出映画感想:キング・コング(1933) ~漆黒の魔猿が見せた漢気~


明けましておめでとうございます。 

光光太郎(@bright_tarou)です。 


ずいぶんと個無沙汰になってしまいましたが、近辺が落ち着いたのでブログの世界に戻ってきました。そんなわけで今回は、怪獣映画の中で初めてトーキー(声付き)として作られた傑作



キング・コング(1933)



について、ネタバレ感想を書いていきたいと思います。

新作「キングコング 髑髏島の巨神」のために色々予習していますよ!いら無さそうだけど!!


(出典:http://eiga.com/movie/60024/photo/)





■あらすじ 

キングコングVS髑髏島怪獣軍団&ニューヨーク飛行機隊 feat.映画撮影隊&金髪美女   



■大まかな感想  

第二次世界大戦前の映画だと思って舐めてかかると、大火傷すること間違いなしの大傑作です。確かに映像は白黒だし、画面の比率も横長じゃないし、演技もどこか大袈裟だったり、そもそもジャンル映画だったりしますが、お話の丁寧さや「島ごと作ったのでは…?」と思わせる巨大なセット、何よりも特撮技術の素晴らしさによって、今見ても飽きずに楽しめるんですよ。



とにかく今作はエンタメ一色に染まり切っていて、我々観客もそのエンタメに素直に乗っかれる工夫が施されているんですね。その理由としては次の3つが挙げられるでしょう。   


①怪獣&バトル!

 ②フィクションを信じさせる特撮技術&セット

 ③実は丁寧な物語運び 


今回は褒め中心になりますが、既に名作とされているから褒めるのではなく、本当に凄いことをやっているから絶賛したくなるんですよ!それぞれについて詳しく説明していきます。  




■怪獣&バトル! 

今作はタイトルにあるキングコングという巨大ゴリラ以外にも、実に多種多様な怪獣が出てきます。ざっと挙げると… 


・ステゴサウルス 

・首長竜 

・ティラノサウルス

 ・巨大蛇

 ・プテラノドン 

・キングコング 


この6体ですね。1つの映画で6体も怪獣が見れる!眼福ですよ!

しかしこの中で主役級のコングだけは「漆黒」なので、かなり目立っています。


そして、怪獣同士のバトルが繰り広げられるんですねぇ…しかも3連戦です。



初戦はキングコング対ティラノサウルス。

本作随一の見せ場です。見た目がカッコいい打撃よりも密着しての関節技や絞め技の方が効果抜群というのもリアル(?)で良いですね。トドメはかなりゴア(グロ)です。  



次戦はキングコング対巨大蛇。 

キングコングが金髪美人のアン・ドロワを自分の住処に落ち着けたのも束の間、忍び寄ってきた巨大蛇と対決!ティラノサウルスとは全く違う戦法を取る巨大蛇に対してキングコングはどう立ち向かうのか?そういえば怪獣モノは洋邦問わず「巻きつく系怪獣」が多い気がしますね。マンダとか大ダコとか。 



最後はキングコング対プテラノドン。 

この島に休息という二文字は無いということを突きつけるかの如く、巨大蛇との戦いを終えたばかりのキングコングをプテラノドンが強襲してきます。アンを守るためにもキングコングは立ち向かいますが、空を飛ぶ相手に対して大苦戦。決定打を与えることができません。もしかしたらプテラノドンは、どこかの悪魔男よろしくキングコングの戦いを観察して「俺ならキングコングを空から攻めるね」と思ったのかもしれません。 



この様に、1本の映画で怪獣バトルを3つも見れる!眼福ですね! しかし、ここで終わらないのが「キングコング(1933)」。怪獣バトルで興奮しきった観客へ更なる戦闘エンタメをブッ込んで来ます。なんと、ラスボスとして「飛行機隊」を用意していたんです! 



最後の最後、エンタメに心を売った人間たちの手によってニューヨークへ連れ去られたキングコングは、惚れこんだ女-アン-をカメラマンたちのフラッシュ攻撃から救うために鋼鉄の束縛を打ち破ります。その場から逃げ出したアンをその手に収めニューヨークを歩きまくるキングコングは、遂に当時世界最高の高さを誇っていたエンパイア・ステート・ビルに登っていきます。



キングコングにとっては愛のハネムーンかもしれませんが、人間側としては迷惑千万。ニューヨークを破壊し混乱に陥れた怪物を、囚われた1人の女の命を救うために、当時の最新鋭兵器「機関銃付き飛行機部隊」が飛び立ちます!



未開の髑髏島で最強を誇ったキングコングが勝つか?文明が生み出した新しき力が勝つか?

エンタメ過剰供給な本作のラストを飾る、壮絶なバトルです。



この様に、見たことはあっても動いている姿を見たことが無い怪獣を次から次へと登場させては戦わせ、最後には最新技術すら見せるというてんこ盛りっぷりは、今の目で見てもお腹いっぱいになります。



しかし、これらは確かな表現技術が無ければ全く意味がありません。次は、フィクションエンタメを最大限信じさせるために施された特撮技術、及びセットについて説明していきます。




■フィクションを信じさせる特撮技術&セット  

これはあくまでもエンタメであって、髑髏島もそこに住む怪獣達も実際には存在しません。しかし、この物語を成立させるためには「巨大な怪獣」「人類未開の島」を存在するかのように見せなくてはなりません。様々な特撮技術、及びセットによって、これらフィクションを信じることが出来る様にしているんですね。 



まず「巨大な怪獣」達ですが、彼らは全員「人形」です。体や腕、足を動かせるようにした人形を用いて動きを1コマ1コマ撮影し、それらをつなぎ合わせることで、動いている「ように見せる」わけです。NHKの「ニョッキ!」や「デザインあ」でお馴染みのストップ・モーション・アニメというやつですね。 



ストップ・モーション・アニメは滑らかに動くCGとは違い、所々映像として不自然な箇所もあります。また、怪獣達もどことなく人形らしい質感であるため「モノ」として見えてしまうでしょう。しかし、そんな「モノ」が、生きているとしか思えないような動きで戦い合っている姿を見てみると、何故か感動してしまうんですよ…。



どうやったら人形をこう動かせるんだ? 

どうやったら「モノ」を「生き物」に見せることが出来るんだ?

 今自分が見ているものは明らかに「ニセモノ」同士の戦いであるはずなのに、何故リアルな戦いだと思い込み、食い入るように見てしまうのか…。 



ウソをホントに見せる凄まじいCGが一般的になった今だからこそ、ストップ・モーション・アニメで得られる体験が今作には詰まっていました。「ゴジラ(1954)」に通じるシーンもあるので、特にニューヨークに行ってからのシーンには目を凝らしてみて下さい!  



また、先ほど「怪獣達は全員人形」と言いましたが、訂正します。実はキングコングだけは実物大の顔や手などが作られています。特に顔は精密に作り込まれていて、様々な表情を見せます。こういった実物モデルを作ることで、合成という手段を採るよりも、人とのサイズ差を分かりやすく示すことが出来るんですね。

まさか、キングコングが人間を喰うシーンを撮るために使われるとは思いませんでしたけどね…!



今作で怪獣達以外に目を引くのは、髑髏島におけるセット、作られた舞台でしょう。キングコングの侵入を防ぐための巨大な(本当にデカい)扉を始め、原住民たちの村、髑髏島の奥地、キングコングの住処等、様々なセットを組んでの撮影が行われています。特に扉周りのセットは本当に素晴らしく、物語上の重要箇所として強い印象を残すものになっていましたね。  


どでかいセットを作って引き画で撮って人をいっぱい置いてスケール感アップ!という、そりゃデカく見えるだろうという正攻法で攻めてくる姿勢に感服してしまいましたよ。  



と、これまでは怪獣や特撮と言ったことについて駄弁ってきましたが、今作は物語を丁寧に構築しているからこそ、観客を飽きさせる事無く映画にのめり込ませているんですね。  




■実は丁寧な物語運び

今作は怪獣が出てくるまで約45分近くの時間がかかります。怪獣映画として、この引っ張りの長さは異様に見えます。何故なら、怪獣を楽しみにしている観客たちに退屈な時間を45分も作っていると言えるからです。私だったらポップコーンを食い尽くし、暇を持て余して怒り狂っていることでしょう。



しかし、怪獣が出るまでの45分間は全く飽きることが無いんですねぇ…。怪獣映画で怪獣がいないのに!飽きない!これは何故か?



その理由は、その場面で解決することが明確であり、興味を惹き付ける謎が並行して語られ、早いスピードで場面転換を行っているからだと思います。



最初に明示される解決事項は「早めに女優を探すこと」ですが、それよりも前に「強力なガス爆弾や通常の3倍の人数を搭載している船」を謎の対象として示しています。何故映画の撮影でこんな装備が必要なのか?観客はこの謎を抱えつつ、全ての首謀者である映画監督が行う女優探しを見守ることになるわけです。この時、港→船の内部→ニューヨークという三場面の転換を素早く行っているので、画的にも飽きが来ないんですね。この様な物語を語る上での工夫が45分間に詰め込まれているため、例え怪獣が出てこなかったとしても大丈夫なわけです。



そもそも映画監督の思考は「面白い映画を撮るぞ!」というものなので、面白い映画を観たい観客としては、この監督の動向にどうしても興味を持ってしまうんですが(笑)。



そして、いざ怪獣が出てきたとしても、その丁寧さが失われることはありません。船乗りとアンの恋、キングコングがアンに向ける愛情…女によって変わる2人の野獣を比較せずにはいられない展開や、自然が文明によって淘汰される現状を思わせるような終盤等、視覚的なエンタメのみに頼っていないことが分かる物語展開になっています。そしてラスト、決して報われることのない一方的な愛情を示し続けた漢の姿…。



今作は痛快娯楽冒険譚であり怪獣映画でありますが、ドラマ映画としても作られていたんですね。




■ちょこっと残念な点

今まで大絶賛してきましたが、どうにも気になる点もあります。 


それは、唐突な恋愛描写です。 

船乗りとアンは最初ケンカをしつつも航海中に仲良くなっていきます。が、島についた夜に船乗りから唐突な愛の告白が始まるのです。え!?もうそこまでいってたの?と驚くのも束の間、なんとアンも同じ気持ちだったんですねぇ…。ビックリです。冒頭で「観客に受ける為に恋愛が必要なら、入れてやる!」と映画監督のキャラクターが言いますが、まさかそれを皮肉っているのでは…。一目惚れで愛を通したキングコングの方が、まだ「恋愛の過程」が描かれているなと思いましたよ。 




■最後に 

様々なエンタメが過剰供給された、正に娯楽大作と言える今作。半世紀以上前の作品であったとしても、面白さの根本を抑えたものは面白いということを証明しているかのようです。この「てんこ盛り精神」を確実に受け継いでいるであろう新作「キングコング 髑髏島の巨神」には、大いに期待したいですね‼‼‼ 


 3月25日の公開が待ち遠しい‼ 




↓「キングコング(1933)」の予告




↓「キングコング 髑髏島の巨神」の予告

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