映画感想:「映画Go!プリンセスプリキュア」 ~子供を舐めるな~



ごきげんよう。

光光太郎です。


この「ごきげんよう」という挨拶はGo!プリンセスプリキュア(以下ゴープリ)の定番台詞からとっています。これからも分かる通り、私は只今このシリーズにゾッコンなわけです。何故ゾッコンになったかというのはまた別な機会に書きたいと思いますが、今回は今日観てきた


映画Go!プリンセスプリキュア Go!Go‼豪華3本立て!!!


の感想を書いていきたいと思います。ネタバレ全開で行きますので、よろしくお願いします。











■あらすじ

「キュアフローラといたずらかがみ」(約5分)

素敵な髪飾りを付けてウキウキ気分のキュアフローラ。早速かがみを見てみるけど、何かヘン…?


「パンプキン王国のたからもの」(約55分)

パンプキンプリンを食べに行ったはるか、みなみ、きらら、トワ、ゆい一行は、パンプキン王国でのプリンセスコンテストに出場(ゆい以外)することになって…?


「プリキュアとレフィのワンダーナイト」(約15分)

突然パンプキンキングダムに召喚されたプリキュア一行は、不思議な女の子「レフィ」に連れられ太陽を取り戻す戦いに挑む!



■概要

まず最初に断わっておきますが、私はプリキュアの事を「子供たちの為の娯楽作品」であると思っています。当然ですね。これは仮面ライダーでもウルトラマンでもスーパー戦隊でも同じことであり、我々大きなお友達が最も気を付けなければならない点です。本来私のような大人がワーワー言うものでないことも分かっています。ここから先の事は、これが前提にあっての感想です。

今回は3本立てという初の試みを行った作品であり、それぞれ「CG短編」「セル本編」「CG中編」となっています。主題歌をELTが歌っていることと、CG中編=レフィのCGメイキングを公開していたことでも有名な作品ですね。またプリキュア映画といえば「ミラクルライト」という入場者プレゼントも忘れてはいけません。これを持って子供たちが懸命にプリキュアを応援している姿は、プリキュア映画最大の魅力です。私が観た回は何と満員でした。これはファン冥利に尽きます。

この3本はそれぞれ監督が異なっており、そのせいか出来にバラつきがあります。正直言って、これから辛辣な事が書かれる部分もあるので、この映画が本当に大好き!という方は見ない方がいいと思います。



■感想

まず全体を通しての感想としては「CG傑作、セル駄作、そして疲れる」です。映画体験を含め、観た価値は十分に感じられる作品でしたが、今回の構成含めて言いたいことが600万個あるような作品でした。それでは、順に感想を書いていきたいと思います。



「キュアフローラといたずらかがみ」

面白い所

①CGが可愛い

②絵本の様に分かりやすいお話


①CGが可愛い

いたずらかがみに関してはこれに尽きますね。とにかくキャラクターが可愛らしい!プニ感が溢れる素晴らしいCGだと思います。コロコロ表情が変わりますし、ずっと見ていたくなりますね。特に髪飾りとかぼちゃ帽子の質感は最高ですね。また、このバランスのフィギュアも欲しいところです。勿論全プリキュアで。

CGディレクターは中沢大樹という方で、デジモンセイバーズやプリキュア映画、ワンピース特番、ドラゴンボール映画等でCGを担当されている方ですね。東映のアニメ向けCGを担う方という感じでしょうか。監督は貝澤幸男という方で、1980年代から演出や監督、シリーズディレクターを務めておられるベテランさんですね。この御二方をスタッフにしているところを見ると、この短編が如何に力を入れて作られていたかが分かります。


②絵本の様に分かりやすいお話

この短編はサイレントで進むのですが、起承転結が非常に分かりやすい作品でした。肉弾バトルもなく、幽霊たちとのお遊びにのせてお話は進んでいきます。キュアフローラの感情の起伏も前述したCG技術によってパッと見で分かるものになっているため、子供たちでも簡単にお話を理解することができていたと思います。劇場の空気感も良い感じでした。


残念な点

①ライト展開多すぎ

②幽霊の数が多い


①ライト展開多すぎ

この短編では上述の「ミラクルライト」を振る展開があります。それ自体は良いと思うのですが、流石に3~4回程続くと…。動きは可愛いのですが、子供は飽きていましたね。


②幽霊の数が多い

確か5体程幽霊がいたと思うのですが、正直3体位でも足りたのでは…。その分作業量を減らし、更なるCG表現に挑戦して欲しかったです。



まとめると

面白い点

①CGが可愛い

②絵本の様に分かりやすいお話

残念な点

①ライト展開多すぎ

②幽霊の数が多い


となります。本編前の短編として果たすべき「掴み」の役割は、全て果たしていた作品であると思います。是非この雰囲気のCG短編を映画の常連にして欲しいですね

さて、それでは次の感想に移っていきます。辛辣な言葉が多くなると思います。












「パンプキン王国のたからもの」

ここでは残念な点、いや怒りを覚えた点から先に書いていきたいと思います。


怒りを覚えた点

①キャラクターが本人だと思えない

②主題と劇中演出が一致していない

③設定無視、命の軽視等、納得いかない描写の数々



①キャラクターが本人だと思えない

この部分に最も怒りを覚えましたね。アニメ、ドラマ問わず、テレビシリーズの劇場版として最低限超えるべきラインが超えられていないと思います。この作品はゴープリの劇場映画であるにも関わらず、ゴープリのキャラクターが本人に見えないんです。その原因は主に「言動」と「やり取り不足」だと思います。

まず言動についてですが、これは「海藤みなみ」と「天ノ川きらら」というキャラクターに最も顕著でした。というより今回、この二人はほぼモブ扱いです。



「海藤みなみ」(以下みなみさん)はTV本編では生徒会長を務めており、劇中随一の人格者、頭脳明晰スポーツ万能といった、所説「完璧超人」キャラとして描かれています。それでいて若干世間知らずで天然が入っているところが魅力的なのですが、今回は目の前で起きているあまりにも不自然な展開について、一言も不信を漏らしていないんですね。表情の変化などもなしです。それどころか明らかな罠にも簡単に引っかかっていましたし…。TV本編において冷静な視点と母親のような安定感ではるかを支える彼女はどこへ行ってしまったのか…。

まぁはるかに救出されるためにわざと捕まったと考えれば、まだ納得できますが…。とにかく、この作品でのみなみさんは、姿形はみなみさんでも全くみなみさんらしくないんです




続いて「天ノ川きらら」(以下きらら)についてですが、彼女はTV本編ではモデルとして精力的に活動しており、トップモデルになるという夢の為に努力を欠かすことはありません。また、みなみさんのように「正しさ」を重視するようなキャラではなく、あくまでも現実的な視点で物事を見ています。精神面において、劇中で最も自立したキャラクターと言えるでしょう。その為、今回のような事態に陥った場合最も先に不自然さを察知する人物であり、敵の罠を逆手に取るような行動をとってもおかしくないのですが、一切不信感を抱くことなくプリンセスコンテストを楽しんでいます。表情の変化も、ほんの少しのセリフも無しです。

まぁここもトワやはるかに助けられるために捕まったと考えれば何とかなるのですが…。繰り返しになりますが、この作品でのきららはきららであってきららでない何かにしか見えないんです。


この二人がモブ扱いになることはTV本編でもよくあるのですが、その場合は表情やちょっとした台詞、そして「やり取り」で「らしい」描写がなされています。TV本編では、みなみさんときらら、そしてはるかの間でのちょっとした「やり取り」でも三人の関係性を覗かせる描写があるのですが、今回はその「やり取り」もかなり稀薄でした。日常でも戦闘時でもみなみさんは冷静にはるかを気遣い、きららはひょうひょうとしながらもはるかを支えています。それが、無いんです。キャラクターが活き活きとしていないんですね。正直に言って、作品に対して向き合っていないのではないか?とすら考えてしまうほどです。後述する「プリキュアとレフィのワンダーナイト」では「言動」や「やり取り」がしっかりとできていたので、これは偏に監督と脚本の責任であると思います。主要登場人物が全く成長しないのもどうかと思います。

他にも、はるかがやたらと難しい言葉や説明的な台詞を言っていたりと、かなりノイズになる部分が多かったですね。前述していますが、TVシリーズの劇場版として果たすべき最低限のラインを超えられていないと思います。トワはトワらしかったかな…?



②主題と劇中演出が一致していない

今回の主題は恐らく「家族愛」だと思われるのですが、そこに絡めた演出を全編に通して行っていないので分かりづらく、非常にのりづらいものになっていると思います。この「家族愛」の部分も、ゲストキャラクターと主役であるはるかのもののみがいきなり語られるだけなので、あまり印象に残らないんですよね…。唐突に家族愛が語られ、唐突に終わり、また唐突に始まる…といった印象です。、冒頭にそれぞれのメンバーの家族との様子を入れる、パンプキン王国の妖精も「家族」として扱っている描写を入れる等、もっともっとやりようがあったように思えてなりません。主題と演出の一致で言うと、前シリーズの劇場版「映画ハピネスチャージプリキュア!人形の国のバレリーナ」が素晴らしい作品だったのですが…。

また、劇中において「絶望の中で希望を持つこと」についても色々と描かれているのですが、主題と全く交錯しないんですねぇ…。家族がいるからこそ希望を持てる、家族を信じているからこそ希望が生まれる、といった様に絡ませることも出来ると思うのですが…。全編通して伝えたいことはなんとなく分かるのですが、とにかくブツ切りで描かれるため、どこでどうのればいいのか分かりませんでした。

唐突といえば、強化変身もかなり唐突でしたね…。最初っからブチ破れば良かったのでは?と思えてなりません。



③設定無視、命の軽視等、納得いかない描写の数々

今回の敵はなんとゼツボーグでありながらプリキュアの浄化なしで倒せるという驚きの描写がされていました。今回のボスであるウォープはディスダークではないため完全なゼツボーグではないのかもしれませんが、これはかなり興ざめでした…。だったらさっさと助けろよ!(これがTV本編にも活かされて、ゆいちゃんがプリキュアばりに戦う伏線だとしたら許せますが)

またこれは今作のみに限ったことではないのですが、子供向けアニメの劇場版では「命を軽視するシーン」が多いように思えます。これが効果的であったり、主題と密接なつながりを持った描写であれば良いのですが、今作ではかなり雑であったと思います。特に終盤における大絶望シーンはどうなんでしょうか…?敵を凶悪に魅せるための演出だとしても、あそこまで直接的に「生きている者の死」を連想させることを大規模に描くことは、子供たちに無用なトラウマを植え付けるだけだと思います。

その他にも、不可解な歩き方、寂しすぎるコンテスト会場と拍手そこは「パンプキン」だろ!等、ノイズになる描写がこれでもかとあり、純粋に楽しむことが出来ませんでした…。



続いて面白いと思った点を書いていきます。面白い所は面白かったんですよ!

①妖精達による渾身のギャグ

②バトル、表情アップの素晴らしい作画


①妖精達による渾身のギャグ

妖精達の面白さはずば抜けていました。アロマやパフは勿論の事、映画オリジナルの「パン」「プウ」「キン」という妖精たちのギャグも子供たちに大ウケでした。素直に面白いと思える部分だったと思います。間の取り方も完璧でしたね。


②バトル、表情アップの素晴らしい作画

プリキュアといえば激しい肉弾バトルが魅力の一つですが、今回のバトル描写は短いながらもゴープリらしい、カメラワークがグイグイ動くアクション映画のような迫力を持った、素晴らしいバトルシーンであったと思います。また、はるかの表情アップも本当に可愛い作画であり、こういった部分が観れただけでも良かったと思えます。



総括としては

怒りを覚えた点

①キャラクターが本人だと思えない

②主題と劇中演出が一致していない

③設定無視、命の軽視等、納得いかない描写の数々

面白い点

①妖精達による渾身のギャグ

②バトル、表情アップの素晴らしい作画


ですね。

この「パンプキン王国のたからもの」は「いやいや、ちょっと待て」といいたくなるシーンばかりで、正直言って殆ど楽しむことが出来ませんでした。監督と脚本家の方からゴープリに対する愛情を感じることが出来ないばかりか、子供映画に対する不真面目さを感じてしまいました…。

それでは最後の作品「プリキュアとレフィのワンダーナイト」へ移ります。







「プリキュアとレフィのワンダーナイト」

面白い点

①ゴープリ愛に溢れる演出

②分かりやすいお話

③凄まじいCG


①ゴープリ愛に溢れる演出

この作品では前述したような「キャラクターが本人に見えない」といった問題点は皆無でした。正にTVシリーズのキャラクターそのものに見える、素晴らしい演出の数々が光っていました。はるかは慌てん坊で少しアホっぽい(重要)けど、芯の強さと一生懸命さを持った少女に見えますし、みなみさんは冷静さを持って事態に対処し、リーダーシップをとっています。きららはひょうひょうとしながらも一生懸命な相手を支え、トワはキリッと締めてくれます。これらをちょっとした台詞、やり取り、動き(特にきららの座る動作)で表現されていて、キャラクターがとても活き活きと描かれていました。これぞゴープリ!と思わず唸ってしまいましたね。

この作品の監督、CGを担当した宮本浩史さんのブログを見ても、この作品に対する思い入れの強さを伺うことが出来ます。



②分かりやすいお話

暗闇の国に太陽を取り戻す、その為に「ミラクルライト」を塔に刺しに行く…という分かりやすいお話になっていました。分かりやすいというより、単純にのりやすい、見やすいお話でした。


③凄まじいCG

これは説明不要でしょう。滑らかとは言えませんが、素晴らしいの一言に尽きるCGだと思います。先ほどのリンクを開いて頂いたり、現行のEDアニメをみて頂くだけでもその素晴らしさに思わず唸ってしまうのではないでしょうか。



残念な点

①国民が不幸に見えない

②敵の倒し方

③敵を「羨ましい」と思ってしまった


①国民が不幸に見えない

闇に包まれた国にもしっかりと国民がいるのですが、あまり不幸に見えず、事態の緊急性が伝わりづらくなっていたと思います。解放された後の様子ももう少し欲しかったですね。


②敵の倒し方

パンチ一発バイバイキンは笑いましたが、しっかり浄化した方が良かったのでは…?


③敵を「羨ましい」と思ってしまった

これは作品自体の事ではありませんが、あのかぼちゃ怪人、羨ましいですね…。



まとめると、

面白い点

①ゴープリ愛に溢れる演出

②分かりやすいお話

③凄まじいCG

残念な点

①国民が不幸に見えない

②敵の倒し方

③敵を「羨ましい」と思ってしまった


ですね。不満らしい不満がない、それでいて間違いなく「ゴープリ」であった今作は、今回の3本の中でも傑出した傑作であったと思います。何よりも、制作者のゴープリ愛プリキュアCGの可能性を感じられたことが嬉しかったですね…。こういったCGのプリキュア描写は「いたずらかがみ」のテイストも含めて、今後も続けて欲しいですね。






改めて今回の作品を私なりに総括すると、

CG短編は役割をしっかり果たし、CG中編はゴープリ愛とプリキュアCGの可能性を示したが、セル本編は不真面目な駄作

となります。まぁセル本編終盤での「ミラクルライト一斉灯火&応援」にはグッとくるものがありましたよ!

また、この3本立ては起承転結×3という構成なので、子供たちは飽きていましたね…。特にセル本編後は「まだあるのぉ?」という声があちこちから聞こえていました…。今後はCG短編+セル本編という構成にした方がよいと思います。




こんな所でしょうか。かなり辛辣な文書になってしまい、申し訳ありませんでした。

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