映画感想:「コードネームU.N.C.L.E.」 ~赤、カッコいい~



ごきげんよう。

光光太郎です。


最近スパイ映画が流行っているのか、今年だけでも「ミッションインポッシブル:ローグネイション」「キングスマン」「007 スペクター」等が公開されています。

今回は、そんなスパイ映画人気の波に乗っている今公開された


コードネームU.N.C.L.E.

(原題:The Man From U.N.C.L.E.)

のレビューをしていきます。ネタバレはなるべくしないよう気を付けます…!




↑英語版の公式サイトです。日本版の100倍手が込んでます。



■あらすじ

東西冷戦下の1960年代前半。核兵器とその技術の拡散によって世界を滅ぼそうとする国際犯罪組織の存在がキャッチされ、その陰謀を阻止するべく手を組むことになったCIA工作員ナポレオン・ソロとKGB工作員イリヤ・クリヤキンは、組織に潜入する鍵を握るドイツ人科学者の娘ギャビーを守りながら、行方をくらませた科学者を探し出すため奔走する。(映画.comより引用)


■概要

この映画「コードネームU.N.C.L.E」は、1960年代にアメリカで人気となったスパイシリーズ「0011ナポレオン・ソロ」が原作となっており、今回はその前日談といった物語になっています。1960年代のスパイものというと「007」をイメージしてしまいますが、この「0011ナポレオン・ソロ」は「世界各国の凄腕エージェントが、世界を守るために戦う」というストーリーになっています。

イギリスのMI6として活躍する007とは異なり、多国籍感を持ったチームスパイものというところでしょうか。その中でも、アメリカ人スパイ「ナポレオン・ソロ」とソ連スパイ「イリヤ・クリヤキン」からなる「呉越同舟コンビ」の掛け合いが魅力の主軸な様です。これは「コードネームU.N.C.L.E」でも同様ですね。

また今作には「1960年代のスパイ作品」への愛情に溢れる数々の小道具が登場します。電話やテープなどのレトロな小物もきっちりと描かれているので、電子戦以前の「1960年代のスパイ戦」を意識させてくれます。



私は元々この映画を観る予定は全くなかったのですが、オシャレすぎるポスターにやられてしまいまして…赤を基調としていますし、衣装の何とも言えない素材感に惹かれ、この映画は観なくては!と思ってしまいました。実際ポスターからビンビンに伝わってきた「オシャレさ」は全編に渡って炸裂しており、今作のとても大きな魅力となっています。

上記のサイトを見てもらうだけでも、音楽や写真、サイト構成からオシャレなかっこよさがビンビンに感じられると思います。このビンビンを楽しみにして劇場に行けば、間違いなく楽しめる映画です。



また、この映画は「シャーロック・ホームズ」シリーズで有名なガイ・リッチー監督の作品であり、冒頭の数分からもうガイ・リッチー節が効きまくった展開が炸裂しています。私が考えるガイ・リッチー監督の特徴としては、「ハッタリの効いた演出」「魅力的で活き活きしたキャラクターの描き方」「テキパキ進む状況説明」「ストーリーはオマケ」といったところでしょうか。これらの特徴が「コードネームU.N.C.L.E」にはかなり色濃く出ているので、ダメな人には全くダメな映画かもしれません…。特に「ストーリーはオマケ」というのがかなりノイズになるかも…。

ただ「ハッタリの効いた演出」「魅力的で活き活きしたキャラクターの描き方」による「オシャレなかっこよさ」がとても面白い作品でもありますので、その部分を楽しめるか否かですね。周りの声を聞いても評価は分かれていますし…。

ただOPクレジット、EDクレジットの秀逸さには誰もが心躍ったのではないでしょうか。



それでは、詳しい感想を書いていきたいと思います。それにしてもこのポスター、オシャレかっこいいですね…!このポスターを見て「オシャレ!」「カッコいい!」と思えたならば、今すぐ劇場に行った方がいいと思います。





■感想

まず全体の感想ですが、

「最高にオシャレでカッコいい!けど鑑賞後にモヤモヤモヤ…」

です。




面白いと思った点は次の通りです。

①オシャレでカッコいい全体の雰囲気

②ハッタリの効いたガイ・リッチー節

③多国籍言語描写




①オシャレでカッコいい全体の雰囲気

「コードネームU.N.C.L.E」における魅力の9割はこの要素だと思います。とにかく、映画を構成する何もかもが「オシャレでカッコいい」んですね。作り手が「スパイのかっこよさ」を心底信じて作っていることも伝わってきます。

まずは何と言っても衣装でしょう。私はファッションに疎いのでよく分かりませんが、とにかく主役のスーパーマン、じゃなかった…ナポレオン・ソロ(ヘンリー・カビル)が着ているスーツのオシャレさと言ったら…!着てみたいですね!


その他にも、イリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)が着ている上着のマットさ…!



ギャビー(アリシア・ビカンダー)の着るセクシーでカラフルなドレス…!



ヴィクトリア・ヴィンチグエラ(エリザベス・デビッキ)の着るモノトーンのドレス…!



どれもこれも素晴らしい衣装です!ダサい衣装が殆ど無いので、気分がそがれることも少ないと思います。


また、「電話」や「スパイ道具」を始めとする1960年代当時の小物たちは、レトロであり、オシャレでカッコいいという絶妙なラインを付いています。今の目で見ると「レトロSF」とでも言うような、不思議なガジェット描写に見えるかもしれません。

特に唸ってしまったのは「電話」ですね。ホテルの電話、ヴィクトリアの電話、車に備え付けてある電話…そのどれもが時代を感じさせてくれる、イイものなんですよねぇ…。実家の黒電話を見たくなりました。


そして、「音楽」!全編に渡って流れるオシャレでカッコいい音楽達は、テンポのいい展開との相性も抜群。既存の楽曲が使われている場面も多いので、タランティーノ映画を彷彿とさせます。サントラ、欲しいですね…!


そしてそして!最高にイかしたOPクレジット&EDクレジット‼カッコいいとはこういうことですよ‼‼‼

赤と黒、そしてフォントの黄色がかっこよすぎる…!必見です!!




②ハッタリの効いたガイ・リッチー節

上述した通り、今作「コードネームU.N.C.L.E」ではかなりハッタリの効いた演出が炸裂しています。箇条書きにしていくと…

・テンポのいいカット割り

・大胆な省略、画面分割

・「音」

・状況を捉えるカメラワーク

・字幕

等でしょうか。普通の監督はこんな感じにしないよ~(笑)というのがてんこ盛りです。リアルとは違う、エンターテイメント映画なんだよ!という気概がビンビンに伝わってきます。

特に秀逸だったのが「音」の演出ですね。


またガイ・リッチー監督と言えば「活き活きとしたキャラクター描写」ですよね。「シャーロック・ホームズ」シリーズではこの部分が大きな魅力でしたが、それは今作でも健在です。彼らの掛け合いは、何時まででも観たいと思えるほどに面白いんですよ。特にソロとクリヤキンの、互いの国家の技術や自分自身の技術の競い合い、自慢仕合いは本当に何度でも観たい!



③多国籍言語描写

「コードネームU.N.C.L.E」では、ドイツ語、ロシア語、英語、イタリア語等、様々な言語が登場します。

これ、実はとても珍しいことなんです。ハリウッド大作でも多国籍メンバーが全員英語を喋ることは日常茶飯事ですし、日本映画でも例えば「方言の違い」を明確にした作品は少ないですよね。いきなり違う国の言語を使って芝居をしろと言っても習得に時間がかかりますし、そこから演技をする難しさとかかる時間、コストは想像に難くありません。


しかし今作では多様な国籍の人物達が登場し、それぞれの言語で会話するシーンが非常に多いです。ここを徹底することで、会話シーンに「身内だけで留めておきたい会話をしている」という緊張感が生まれていきます。「思わず出ちゃった地元言葉」という使い方もされていましたね。そういった演出を抜きにしても、単純に色んな国の言葉を聴けることは楽しいですよね。

この「多国籍言語描写」が徹底され、しかも面白さの主軸となっている映画に「イングロリアス・バスターズ」がありますので、興味のある方は是非ご覧になってみて下さい。



面白かった点を振り返ると

①オシャレでカッコいい全体の雰囲気

②ハッタリの効いたガイ・リッチー節

③多国籍言語描写

となっています。この中で最も大きな面白ポイントは①ですね。魅力の9割と言ってしまってもいいかもしれません。作り手の「スパイってのはこうじゃないとな!」という意気込み、熱意、愛情をビンビンに感じられる「オシャレでカッコいい」映画であったと思います。





続いて残念だった点について書いていきます。次の3つですね。

①ストーリー展開が大雑把

②キャラクターの個性が盛り上がりどころに結びつかない

③クライマックス感稀薄



①ストーリー展開が大雑把

これは「シャーロック・ホームズ」シリーズでも色濃く出ていたガイ・リッチー監督の特徴だと思います。

まず、状況説明が異様にテキパキとしていて、しっかりと説明されてはいるのですが理解する時間が少なすぎるんですね。資料をパッパッパと見せて早口で説明してハイっ次のシーン…といった感じの事が序盤からあるので、把握が追い付かないとその後の展開がどうでもよくなってしまう可能性が高いです。しかも説明していることはとても分かりづらい…ということも。


これに限らず、その場その場の演出はハッタリが効いていて面白いのですが、あまりにも演出過多な為にお話の描写不足を感じる展開が多かった印象があります。その為、キャラクターは活きているし場面も面白いけど、全体を見た時に淡泊で分かりづらい…という事態に陥ってしまっています。

ここを許容できるかどうか…が、ガイ・リッチー監督作品の評価の分かれ目になるかもしれませんね。



②キャラクターの個性が盛り上がりどころに結びつかない

今作の主要登場人物である3名、ソロとクリヤキン、ギャビーは、それぞれ性格も違えば特技も生まれも育ちも異なります。劇中ではその違いが絶妙な掛け合いになっていて面白いのですが、それらの個性がお話の盛り上がりどころに直結しているかというと、正直微妙なところです。

それぞれの特技はしっかりと描写されるのですが、それぞれが割と単発で終わってしまいます。なので、彼らのスキルを組み合わせ巨悪や困難に立ち向かうという面は、非常に弱いと言わざるを得ません。特にクリヤキンは「肉弾戦最強」みたいな技術を持っているのに「物凄い力持ち」位にしか描かれないのはちょっと…。



③クライマックス感稀薄

クライマックスが何段階かに分かれているのですが、正直微妙と言わざるを得ない…。圧倒的に盛り上がりに欠けています。(その場その場の演出は最高)

タメが無いんですよ…タメが…。あとイマイチなんで勝ったが分かりづらいんですよね…。勝利後の「やったぁ!」感も全然ないし…。前述している通り「全体的なストーリーの繋がり」が弱いので、積み重ねや伏線で勝つ、というのも弱く…。

直接的に敵を倒す場面が少ないことも大きな原因と言えるでしょう。




残念だった点振り返り

①ストーリー展開が大雑把

②キャラクターの個性が盛り上がりどころに結びつかない

③クライマックス感稀薄


とにもかくにも、ストーリーの繋がりが薄っぺらい印象が強いです。キャラクターの成長や描写の積み重ねといったこともさほどない為、行き当たりばったりで勝っている感がどうしても否めません。「チーム感」の積み重ねは丁寧に描かれていたのですが…。そこをもう少しクライマックスに繋げてくれていたら…!





総括すると、

オシャレでカッコいいし一瞬一瞬は最高だけど、ストーリーは紙で積み重ね不足で盛り上がりに欠ける

というところでしょうか。


色々と文句を言ってきましたが、これらは全て「鑑賞後」に浮かんできた不満点であり、鑑賞中は常に「面白いなぁ!」の連続でした。オシャレでカッコいい雰囲気が全編通して貫かれていますし、最高のハッタリがバリバリに効いているので退屈することもありません。チームの掛け合いもずっと見ていたくなります。「スパイ映画」への愛や憧れも痛い程伝わってきます。

間違いなく、見て損はない「スパイ映画」でした。

細かいことは気にせずに、オシャレでカッコいい雰囲気を体感するつもりで観るのが一番だと思います。


最後に、OPクレジットとEDクレジットは本当にカッコいいですよ‼




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