思い出映画感想:回転 ~ジャパニーズホラーの源流は、勇気か狂気か~



ワクワクもんですね。

光光太郎です。


今年初めてアカデミー賞授賞式を逐一追って見ていたのですが、作り手も受け手も巻き込んだお祭り感があってとても楽しかったですね。こんなにもエンタメ色が強い式だったとは…。


さて今回は、久々に映画の感想を書いていきたいと思います。先日投稿したこの感想記事

の中でも触れていた1961年のゴシック・ホラー映画


回転

原題:INNOCENTS


のレビューをしていきます。といってもいつもの調子で滅茶苦茶量を書くという事はせず、サックリと魅力をお伝えできればなと。



■作品情報

生と死の境界を映画技術の可能性の中で追求しようとする作品。ヘンリー・ジェームズの原作「ネジの回転」を「ティファニーで朝食を」のトルーマン・カポーティとウィリアム・アーチボルドが脚色、「年上の女」のジャック・クレイトンが監督、製作した。撮影は「息子と恋人」のフレディ・フランシス、音楽は「ノートルダムのせむし男(1957)」のジョルジュ・オーリック。出演者は、デボラ・カー、マイケル・レッドグレイブ、パメラ・フランクリン、マーティン・スティーブンスなど。(Movie Walkerより引用)


■あらすじ

ミス・ギデンス(デボラ・カー)がブライハウスという洋館にやって来たのはそこに住む幼いマイルス(マーティン・スティーブンス)とフローラ(パメラ・フランクリン)の兄妹の家庭教師となるためだった。しかしギデンスは洋館の中で不気味な人影を見てしまう…。ギデンスはメイドとして洋館に務めているグロース夫人の協力を得つつ、過去と現在に起きている洋館の事件へと迫っていく…。(一部をMovie Walkerより引用)



それではひとまず「回転」を観た後の私のツイートをば…。



この様に「回転」を観ての面白かった点としては、次の4点が挙げられます。1つずつ、サックリと説明していきますね。

①幽霊が怖い

②ゴシック調の美術が映える、白黒画面の美しさ

③子役ほんと可愛い

④限定空間の会話劇で魅せる心理サスペンス



①幽霊が怖い

この「回転」はジャパニーズホラーにおける幽霊描写の参考になっている映画らしいんですが、正に日本における幽霊描写そのものと言えるような映像が多くありました。

音楽や異常な造形、唐突なタイミング等で過剰に脅かすようなことは全くなく、そっとした、とても控えめな演出で幽霊たちは登場します。極端に言えば、ただ人が立っているだけ、というシーンもあります。しかし、この上なく怖い。人間に見えないんです。


恐ろしく思うと同時に、ホラー映画とはかくも素晴らしいのかと唸ってしまいました。映像加工技術ではなく、演技と画面構成と編集で「人間」を「恐ろしい幽霊」に認識させてしまうのですから…。

まぁ幽霊云々よりも真っ先に女児の歌が怖い映画でもあるのですが…。歌で煽るところは「オーメン」に影響を与えているかもしれませんね。



②ゴシック調の美術が映える、白黒画面の美しさ

「回転」は1960年代の映画ですが、白黒映画として撮影されています。1957年の日本映画「空の大怪獣ラドン」ですらカラー映画なので、これがあえての撮影であることが分かりますね。


ツイートでも言及していますが、この白黒の映像がとにかく美しいの一言。白と黒のコントラスト、明度差がキッチリとしているので、画面が白ボケしていないんですね。これは照明の当て方等がとても工夫されていたのだと思います。ギデンスが夜に白いドレスを着て探索するシーンなどでも、意図的に白黒が強調されていることが分かります。

このキッチリとしたコントラストの映像に、徹底されたゴシック調の美術や衣装がとてもよく映えるんですね。そのゴシック調も暗さや陰気さではなく、優雅さと何処かこの世のものではないかのような雰囲気を醸し出しており、この映画を形作る上で欠かせない要素となっています。



③子役ほんと可愛い

「回転」においてフローラを演じるパメラ・フランクリンちゃんの可愛さは、ほんと筆舌に尽くしがたいのですが…!なんとか説明を…。

その可愛さは、顔や衣装の可愛さだけでなく、動きや表情といった演技、そして小鳥がさえずる様な声といった、役者としての彼女の全てによって出現する「可愛さ」なんですね。いやほんと、超可愛い。


だってこの子、兄貴とケンカして泣いたと思ったら数秒後には兄貴とキャッキャしながら演劇の準備してるんですよ?可愛すぎかよ。

兄貴役のマーティン・スティーブンス君の演技も本当に見事の一言で、「言葉と態度で大人と対決する子供」という難しい役どころを演じ切っていました。



④限定空間の会話劇で魅せる心理サスペンス

ツイートでは詳しく言及していなかったのですが「回転」は幽霊映画であると同時に、会話心理サスペンスでもあるんですね。しかも、登場人物も場所も限定的である様な。何が起こっているかも分からない中で、会話と駆け引きで事態の真相へと向かっていく様には、派手な場面など全くないのに引き込まれてしまいました。


そもそも「回転」では本当に幽霊がいるのかどうか?をどう捉えるかによって、全く異なる2つの物語が見えてくる映画なんですね。そして、「いる」と捉えたとしても「いない」と捉えたとしても、一本筋の通った物語にちゃんと見えるんですね。その為、何回観てもどちらが正しいのか分からない、宙ぶらりんな状態になってしまいます。だからこそ、何回でも観たくなってしまう魅力を持つ作品です。




後半に少し野暮な点がある以外は、欠点らしい欠点を感じることが出来なかった映画でした。邦題の「回転」も、サスペンスとしての、そして物語全体の構造をよく表しているよいタイトルだと思います。

幽霊が心底恐ろしい映画であることは確かですが、それ以上にゴシック調の美術や白黒の美しい映像、サスペンス劇としての魅力が強いので、ホラーが苦手な人にも是非観てほしい作品ですね。オススメです!


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